経営とも現場とも取り組むUPSIDER

Interview02

経営とも現場とも取り組むUPSIDER

THE GROWTHの「支援先とあらためてお話」。第2回のゲストは株式会社UPSIDER代表の水野さんと近藤さん。当初は、代表の水野さんとタッグを組んでいたけれど、今は近藤さんを中心とした座組で進行しています。UPSIDERとTHE GROWTHの取り組みについて、お話をしてきました。

株式会社UPSIDER 代表取締役

水野 智規

Tomonori Mizuno

ABeam Consultingに新卒で入社。金融機関の業務システムフルリプレースの案件に従事。その後、初期メンバーとして株式会社ユーザベースに入社し、NewsPicksの立ち上げや、グループ全体のマーケティング部門を牽引した後、独立。起業当時の課題意識や原体験をもとに、代表取締役の宮城と2018年に株式会社UPSIDERを共同創業。

https://up-sider.com/

株式会社UPSIDER Head of GrowthPartner

近藤 万葉

Mayo Kondo

高校時代から複数のスタートアップでインターンシップを経験し、新卒でAnyMind Groupに入社。その後2022年1月にUPSIDERに入社し、現在はUPSIDERカード事業を中心とする営業部門を統括している。

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執行役員が2人いるような感覚

山代

今後も具体的な支援の内容は変わりませんが、この度、THE GROWTHという組織になりました。我々とUPSIDERとの関係という意味では、もう2年強になりますよね。

水野

おめでとうございます。たしか、はじまりは六本木で、共同代表の宮城と僕との4人で中華を食べましたよね。あれ以来すごく力になってもらっているので、今後とも我々を見捨てないでくださいね。

北尾

出た!こちらこそですよ(笑)

水野

まじめな話、マーケティングの支援をお願いしようと思ったら、専門の会社や代理店など選択肢はいろいろありますよね。その中で、事業とマーケティングの接合の部分から一緒に考えてくれるのは、お2人にしかない魅力ですね。

今日も近藤と話していたんですが、僕はお2人が外部の方という感覚があまりないんです。事業の打ち出しのコンセプトを決めたり、タクシー広告で勝負を張ったり、ギアを入れる必要のある場面でも入ってもらっているので、どちらかと言うと強力な執行役員が2人いるという感覚です。

近藤

その感じすごく分かります!私にとっては、組織設計などにも入ってもらえることがとてもありがたいです。UPSIDERが組織拡大する中で悩んだ際、どんな体制を作っていくか、またその稟議を通すところまで一緒に考えてくれました。ここまでやってくれるんだ!って感激したことを覚えています。

水野

だからこそ、経営者やそれに近い人が、お2人のカウンターとして本気で取り組まなければ、お2人の価値をしっかり発揮しきれないのではとも思います。

北尾

それは褒め言葉としてうれしいですね。普段は経営者の方と直接やっていることが多いです。

現場へのデリゲーションに関して

北尾

そういう意味では、UPSIDERさんへの支援では、初期は経営者である水野さんとがっつりやっていたけれど、あるタイミングから現場が中心になっていきましたよね?その流れにはどういう意図や変化がありましたか?

水野

1つには、社内のその他の部分の業務に自分のリソースを回す必要があったという事情はありました。でもその時点で、近藤のように事業責任者として任せられるメンバーが出現していたので、気合が入っていて信頼できる仲間に預けられるようになったというのがより大きな理由ですね。

山代

そこは僕と2人で、週末にがっつり時間とって話しましたよね?次のフェーズでは誰か、事業責任者を立ててやっていかないと水野さんの1トップではすべてを見切れなくなってきますよと。

水野:

それを受けて、経営から実行まで担う責任者を用意するので、そこの伴走はしっかりお願いしたいとお伝えしましたね。大きいディレクションはそこで握れたけど、じゃあ誰を立てるか?というところはなかなか決まりきらなかったですね。色々と検討した上で、やはりこのポジションは経営や事業責任者など、覚悟と能力のある人を置く必要があると考えました。

山代:

まぁ、いろいろ紆余曲折はありましたね。

水野:

そんな中で近藤に昨年の下期に予算ごと渡してみたところすごくちゃんとやってくれた。だったら山代さんと北尾さんのミーティングにも出るべきだよねとなり、今にいたりますね。

近藤:

あのミーティングに入れてもらってから、自分の視座がすごく上がっりました。定例ミーティングでは、カード事業だけでなくこれから始まる新規事業の話なども含め、会社全体の話をディスカッションします。だから、その全ての責任を負っているんだという気持ちになり、私自身の覚悟が決まりましたね。

山代:

この体制になってから半年ぐらいだと思うのですが、かなり試行錯誤もありながらも、きちんと役目を果たされている印象はありますよ。

北尾:

そういう意味では、THE GROWTHとしては珍しく日々のグロース会議は現場中心にやっている形ですよね。ただ、そうは言っても、経営者である水野さんとは別途で要所要所に1on1もしています。

山代:

DMも裏では飛び交ってますね。現場の目線と水野さんの目線は本当に合ってるのか?など、気になっていることは、適宜確認していますね。

水野:

それで言うと、耳が痛いことをちゃんと言ってくれることもありがたいです。経営者は、自分や活躍しているメンバーへの依存度が高まってくると、発言力もどんどん上がっていってしまうことがある。その時に、外から見て冷静に指摘してくれるのは、本当にありがたいです。

近藤:

昨日のミーティングも正直、耳の痛い話でしたが、そういう考え方をすべきだなと反省しました。

山代:

その話で言うと、支援をしていて思うのが、我々は外部にいるから100%正しくは組織のポリティクスを分かりません。もちろん伴走させてもらっているので80%くらいは分かっていますが、100%は分かっていない。だからこそ言えるというのは、ある気がします。

北尾:

「これはこういう背景もあったから、こうなってるけど、まぁ、仕方ないよね」みたいな部分ということですよね?

山代:

ですね。べき論みたいなものは敢えてはっきり伝えるようにしています。「フレンドリーアウトサイダー」というコンセプトを意識していて、社内のようで社外、社外のようで社内、ここのバランスが大事だと考えています。

水野:

近藤に対して、お2人がきちんと厳しくしてくれているのがうれしいですね。

近藤:

私としては、社内で意見を通す上でもお2人とのミーティングがあるおかげで助かっています。「私からの提案です」ではなく「山代さんと北尾さんとも相談した結果、こういう方向でいきたいです」という提案になる。そうなると社内の反応も変わってきますよね。

山代:

我々が見たからそれだけでどうかというのはあるけれど、少なくとも1回いろんなアングルから叩かれた上でのプランという意味では、提案としてのクウォリティはあがっていますよね。

タクシー広告のクリエイティブ

近藤:

UPSIDERではもともと、水野がマーケに強いこともあり、マーケに関して水野と対等に議論できる人が社内にいないという課題感がありました。私にとって水野と話す前に相談できる壁打ち相手がお2人だと思っています。この存在は、会社的としても大変ありがたいですね。

山代:

たしかに、水野さんがマーケに強いっていうのは、我々の他の支援先を見てもUPSIDERのユニークさの1つですね。水野さんと我々の意見が常に一致しているわけでもなくて、特に初期の頃は、しっかりすり合わせの議論をしていましたよね。

水野:

マーケの中での得意分野も違いますしね。

北尾:

初期の頃のマーケで言うと、まずはターゲットをスタートアップに特化しようというのはマーケ戦略上の大きな意思決定でしたよね。

水野:

そうですね。あれはすごく良かったですね。法人カードって世の中にたくさんある中で、どう特徴付けるかと考えた時に、セグメントを切って狭く深く入っていくのは正しいし、しかも自分たちの強みを一番活かせるセグメントというのもよかったですよね。

山代:

水野さんは起業家だし、事業アイディアをどんどん思いつく。これもいける!あれもやろう!こっちもおもしろそう!というように。さらに、それをできることなら全部やりたいタイプというのは理解できるのですが、リソースを考えたら絞らなくちゃいけないです、これに注力しましょう!とお伝えしたのを覚えています。

水野:

一旦、PMFした感触はあったので、すぐに横に展開したくなっていたのですが、あそこでもう1度しっかり狭いセグメントに絞ってマーケのアクセルを踏み、ポイント還元もしてと足場を固めたのは、今考えると大正解でしたね。

山代:

マーケのアクセルという意味だと、あの時のタクシー広告は今も割と評判がよくて「うちもああいうのやりたい」という声も頻繁にいただくのですが、どうですか?

水野:

すごく評判が良く、つい最近も「タクシーで見ました」と言われたのですが、実際にはこの1年くらい流していないじゃないですか?それなのに視聴者の印象にしっかり残っているというのはすごくよいクリエイティブということですよね。

近藤:

たしかに今も、イベントに出展すると「タクシーで見ました」と言っていただけます。「流していたのは結構前だけどな」と思いながら、うれしいですね。

山代:

ぶっちゃけ出稿量も、そこまで投資はしてないですよね。

水野:

そうなんですよ。たいした量は出してないですよね。きゅっと絞って。

北尾:

出稿量とにはそれほど投資していないかも知れないけれど、「インタビューCM」のクリエイティブという観点では、制作にはそこそこの投資をしたという感触はあります。

山代:

あぁ、確かにクウォリティに投資した感じはありますね。普通にオフィスに訪問して、雑にインタビューを撮るのとは違う。

水野:

あれだけちゃんと作り込んでインタビューを撮影しているのは、当時他になかったですよね。今では、真似されることも増えてきましたが。

山代:

あのアイディアというのは、どういう着想だったんですか?

北尾:

まず、あの時はスタートアップ業界でみんな使っていますよってことを表現したかったから6社6名を撮影しよう決定しましたよね。そうなると1日で6社を訪問するのは物理的に困難なので、1箇所に集まってもらおうという現実的な理由がまずありました。

その時に、どこかの会議室に集まってもらうんじゃなくてちゃんとした撮影スタジオに集まってもらって、そこできちんとプロのクウォリティで照明を作り込んで黒バックの空間にスポットを当ててと、トーンをしっかり作りこみ、人物をかっこよく撮りたいって思ったんです。ヘアメイクもしっかりと入れて、UPSIDERを使っている人たちはかっこいいんだぞ!というのをビジュアルでも見せたかった。

近藤:

みんなかっこよかった!

北尾:

実際の撮影でもみなさん「UPSIDERのファンです」とおっしゃっていましたが、せっかくインタビューに出ていただくからには、もっとUPSIDERを好きになって欲しいなとも思いました。すごいセットの中で、メイクされて、かっこよく撮られるという体験は、彼らにとっても良い体験になると思ったんです。

水野:

それは正解でしたね。UPSIDERの愛され感がすごく伝わる内容になったと思います。

北尾:

あと、どうせ制作費をかけるんだから、ここで作った巨大カードを展示会とかイベント会場とかに持って行って使い回しが効くように作ったりもしましたね。

近藤:

いまだにイベントや展示会で活躍しています!

北尾:

最近よく言っているのですが、スタートアップのはじめてのクリエイティブは、世の中との最初のコミュニケーションになるから、その映像のトーン&マナーが、会社のブランディングと直結してしまうのですよね、よくも悪くも。

山代:

自分は、客観的に見てすごいUPSIDERらしいブランディングの動画だなと思いましたねえ。

北尾:

自分が水野さんやみなさんと接していたり、実際にUPSIDERカードを使っていたりしながら感じていた言語化できないかっこよさを、映像で表現したらこのようになったという感じですね。それを、こういう方向でどうでしょう?と提示したら即決でOKしてくれたのはうれしかったですね。

水野:

UPSIDERらしいなと思いましたし、他に似たようなのがないこともすごい良いなと思いました。

北尾:

音楽がヘビーなロックだったり、割とむずかしめな球を投げてみたつもりでしたが、しっかりキャッチしてくれましたね。

山代:

そこの水野さんの任せ具合だったり、意思決定の速度はさすがですよね。群を抜いて早いですね。そうすると、どんどん北尾さんも乗ってきて、仮編から本編と回を重ねるごとにさらにかっこよくなっていく。挑戦者を応援するクールな会社っていうのがバッチリ出ましたよね。

北尾:

誉められるとどんどん伸びるタイプです。確かに意思決定も早いし、やると決めたらあんな大物たちを6人スケジュールも揃えて、すぐに用意してきた。そこのやりきり力というか、パワーもすごいなと思いましたね。負けてられないなと闘争心をかきたてられました。

THE GROWTHの支援基準は?

水野:

お2人が支援する会社は、どういう基準で選ばれているのですか?お話を聞いていると、結構断っていることもありますよね?

北尾:

少なくとも事業内容では、ないです。

近藤:

そうなんですね!?何で選ばれるのですか?

山代:

人ですね、人で見ています。起業家がどんな人なのかの部分です。あと、僕はこの人を見る部分で、北尾さんを信頼しています。自分が思うことは伝えても、最終、北尾さんがどう思うかで判断してもらっています。

水野:

そうなんですね!ちなみにそれはどういう観点で判断するのですか?

北尾:

かなり直感に近い部分なのですが、この人といっしょにやったら楽しくなりそうかどうかです。もう少し細かく言うと、まず、この人たちは我々のことを信頼してくれるだろうか?外注先の業者として扱うのではなく仲間に入れてくれるだろうか?そういった波長が合いそうかどうかを初回の面談時に自分は見ています。

山代:

前提として、特にこれまでそんなに広報をしてきたわけでもなく、ほとんどがリファラルで入ってきます。なので一定のスクリーニングはされています。ただその中にも、事業としては良いけれどこの人たちとチーム組んでやっていけるだろうか?というもやっとした不安が生まれることがあるんですよね。

北尾:

自分は、それを仲間の輪に入れてくれるタイプかどうか?という表現をしています。

山代:

だから、さきほど水野さんがおっしゃってくれた「執行役員が2人いるような」と言うのは、我々にとってはこれ以上にない最高の褒め言葉ですね。

近藤:

でも、本当にそう思いますよ。

水野:

僕らは、この人って決めた人に頼りきるタイプなのでね。

山代:

そこがピッタリきているのかも知れないですね。顧問のように扱いたいとか、外部アドバイザーとして良いフィードバックをしてくださいというようなご依頼だと、グロースの伴走にはなりません。

事業上の知らないアービトラージはもちろんあるわけですが、事例を知っているか知らないかは、別に小一時間、教えを乞えば解決する話だと思うのです。我々のグロースの伴走は、それとは違うスタンスです。

水野:

我々もそこは求めていないです。ノウハウを提供してくもらうというよりも、いっしょに戦って結果を出してもらうことを求めていますね。一般論は要らないです。

近藤:

特に最近、結構一緒に悩むことが多いですよね。すぐに「こういう時はこうだよ」って教えてくれるのではなくて一緒になって頭を悩ませる。正解のない問いだからこそ、それがすごく大事だと思うんですよね。

他の支援会社の場合「他社事例だとこうです」と事例やノウハウを投げかけてくるイメージなのですが、事業も状況も違う中でそんなにシンプルな話ではないと思うんです。

今後、THE GROWTHに期待すること

近藤:

特に私を中心に見てもらうようになってから、お2人がUPSIDERの中に入ってきてくれる度合いが一段と上がっていると感じています。このまま、次々とメンバーを引き上げていってもらえるとうれしいですね。まずはお2人とのミーティングに出られることが、1歩目としてのステータスになるような。そういう存在になっていただきたいと思いますし、自分もお2人を社内でそういう存在にしていきたいと思ってます。

水野:

事業のグロースはもちろん、少しずつ新しい事業も増えていく中で、採用もスタートアップ人材ではない幅広い採用も増えていっています。その中で、会社としてどう見られていくかというコーポレイトのブランディングの領域でもお力添えをお願いしたいと思っています。

山代:

THE GROWTHとしても、スタートアップの事業グロースとブランディングに特化したファームであるというのを打ち出していこうと思っています。ブランディングには、もちろんサービスのブランディングもあるけど、当然コーポレートブランディングもあるし、そこそこの規模になってきたらその2つは切り離して考えるべきというのは、賛成です。やっていきましょう。

水野:

是非是非。企業の成長源泉が管理や採用に移ってきている部分もあり、自分は今後その領域にも注力していくことになりそうです。ぜひそちらの領域でもお力添えをください。

山代:

わかりました!